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マロナの幻想的な物語り Comments (3)
映画館の大画面で観ることができて(@東京国際映画際)、本当に良かった。
邦題は、内容に必ずしも合っているとは思えないが、原題がそうなのだから仕方ない。
言語はフランス語だが、監督はルーマニア人女性で、アニメのみならず実写系まで手がける、すでに国際的にも有名な人らしい。
ストーリーは、主人公の一人称で語られる。
シンプルだが深みがあり、犬好きの人は、きっと感涙だろう。
主人公は、サバサバしている性格のわりには、いじらしい女の子(犬)。
“無条件の愛”を飼い主に捧げるが、飼い主の方は、いろんな事情で必ずしもそれに応えられない。
自分としては、「9」、アナ、サラ、マローナと、飼い主が変わるたびに名前も変わるという、その運命の“はかなさ”に心打たれた。主人公は、実は必ずしも“マローナ”ではないのだ。
ただ、なんといっても素晴らしいのは、アートだ。
目もくらむ、豊かなグラフィック。
線はうごめき、形は自在に変化して動き回る。特に、アクロバットのマノロの描写は圧巻。
動く人物(と犬)は、コンピューターで描いていると思うが、それだけではなく、背景では水彩やパステルなど、様々なリアルな画材もたくさん使っているはず。
さまざまな要素が、多層のレイヤーをなして重なり合い、拡張・収縮し、回転・傾斜し、ある時は3D空間を構成する。
本作品は、基本的に2Dの“動く絵本”であるが、それゆえに突然、ラストシーンで明示的に使われた3D空間は、目が慣れていないだけに、ストーリーとも合致して迫力を生んでいる。
そういうグラフィック上の、仕掛けとアイデアに満ちた作品だ。
短編ならこの種の作品はいくらでもあるだろうし、パーツの使い回しも多いのだが、それでも、このクオリティで長編1本を作ってしまうというのは、並大抵のこととは思われない。
グラフィックの複雑さの一因は、いろんなアーティストがからんでいるためと思われる。
制作は、ルーマニア、フランス、ベルギーの3社の合作である。
キャラクターデザインは「ブレヒト・イーヴンス(Brecht Evens)」、背景は「ジーナ・トルステンソン(Gina Thorstensen)」と「サラ・マゼッティ(Sarah Mazzetti)」とのこと。
自分は全く知らなかったが、慌てて調べてみると、知る人ぞ知る作家のようだ。
イーヴンスは、水彩を使って画面一杯に色数を尽くして描く作家のようで、何冊もグラフィックノベルが出ている。
トルステンソンは、自分は現段階で、イーヴンスとの絵柄の区別はついていないが、この人の絵とアイデアが、美術の基調を決めている気がする。
マゼッティは、2019年ボローニャ国際児童図書展で、新しいタレントとして賞を取ったほどの実力者らしい。面白く顔が変化する、イシュトヴァンの母親は、この人の造形ではないだろうか。
とんでもないレベルの、モーション・グラフィックスの世界。
絵は“絵空事”、その絵空事だからなしえることを、一つの究極まで追い求めた作品だ。
ともかく、圧倒された。
手描きの幻想的な世界が美しくて美しくて、あっというまに引き込まれてしまうけれど、犬の一生は出会う人々に翻弄され続け、愛情に満ちた至福の時間はいつも長くは続かない。
私は犬好きなので犬が常に家族の中に居て、犬が少しでも不幸になるのを見るのは耐えられない。そんな人は多いと思う。でも、それにも増して、真に純粋な魂だけが見る事ができる世界の美しさに圧倒される感動がここにあり、1度観ると忘れられない。できればVRか何かでマロナの世界をどっぷり体感したい。切なくて痛い思いもするのだけど。
何とも衝撃的な出来事で始まって、自身が生まれる前の両親の出会いから、生まれて程なくして譲られて、捨てられ拾われ売られて巻き起こっていく犬生を、マロナの一人称で振り返りみせて行く。
とても賢く人の感情をも嗅ぎ取るマロナ。
淡々と語る、幸せは苦しみの休息とか悲しすぎる。マルチーズの父親とミックス犬の母親の間9匹の犬の末娘の波瀾万丈な犬生物語。
何とも衝撃的な出来事で始まって、自身が生まれる前の両親の出会いから、生まれて程なくして譲られて、捨てられ拾われ売られて巻き起こっていく犬生を、マロナの一人称で振り返りみせて行く。
とても賢く人の感情をも嗅ぎ取るマロナ。
幸せは苦しみの休息とか悲しすぎる。
決してみんな愛情がなかった訳ではないのに…。
本人的には幸せな時もあったのかも知れないけれど、人間の身勝手さに振り回され続けた、優しさと悲しさが表裏一体となった物語が切なかった。