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横須賀綺譚 Comments (2)
東京で同棲していたものの、東北で暮らす彼女の父親に介護が必要となり、2009年3月に別れた二人の話。
東京で仕事をしているからと、あっさり彼女と別れた9年後、久々にあった友人に彼女が震災で亡くなったことを告げられたが、その数日後、死亡届けの後に何故か、横須賀への転出届けが出されていたという…。
痴呆症の顧客とのことや後輩とのやり取りをみるに、9年前とは変わったのか、というところに始まり、川島の言い分も、ある意味人間らしさを感じるし理解出来るところはあるし…。
ただ、契約書のこと、電話のこと、記憶のこと等々の設定や、主人公のリアクション等、かなり荒いなぁと感じる流れ。
友好祭の件なんかは違和感あり過ぎるし。
なんて思っていたら、やっぱりそう来ましたか。
まあ、タイトルがタイトルだし、かなりムチャだけど、それを言われたら何も言えないよね。
一応潜在意識としてあったもの、と受け入れられれば、これで彼の意識が変わるのか、と作品の後の想像が膨らむかな。
正直、私はこの映画を舐めていたのだと思う。これは非常に足元の覚束ないミステリーであり、なおかつ記憶をめぐる俯瞰の視点を持った幻想譚とさえ言えるのかも。人は大きな悲劇に見舞われた時、その記憶を早く忘れたいと願うだろうか。忘れずに語り継ぎたい誓うだろうか。あるいは何もせずとも記憶は時間の経過と共に風化していくものなのか。かつての恋人を探しに東北を旅して帰ってきた主人公は、これらの選択を迫られた人々とおのずと対峙することになる。その過程で横須賀にあるケアハウスに辿り着くのがとりわけ興味深い。なぜなら作り手はこの場所を介護の場というよりも、むしろ記憶の集積地として用いているからだ。渦巻く記憶。忘れまいとする意志。それでもなお膨大な情報量によって日々何かを洗い流される我ら。本作は誰も責めたりはしない。ただ、誰しもに覚えのあるこの感覚を、映画というキャンバスを使って代弁してくれている。そんな気がした。