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ワンダーウォール 劇場版 Comments (9)
今更ながらになりますが、あくまでも備忘録的に記録に留めておこうかと思います。
原案自体は、京都大学の吉田寮をモデルにした、百年以上の歴史のある京宮大学・近衛寮を舞台に、本物の吉田寮と同じく”変人の巣窟”と呼ばれ、敬語禁止、ジェンダーフリーのトイレ、全員一致が原則の会議など、学生自治によって運営されている自治寮であり、一見無秩序のようでいて、”変人たち”による”変人たち”のための磨きぬかれた秩序が存在し、一見すごく面倒くさいようでいて、私たちが忘れかけている言葉に出来ない”宝”が詰まっている場所。
そんな自治寮に、老朽化による建て替えの議論が巻き起こるのですが、寮舎を補修しながら残したい寮生側と、他の建物に建て替えたい大学側との対立を軸に描いた物語です。
従いまして、端的に言えば、大学側の一方的な京都大学吉田寮の寮生追い出し問題を題材にしており、本ドラマで描かれていた状況と同じような事が実際に起きていたことはニュース報道などで知ってはおりましたが、確かに大学内における自治問題には違いないのですが、学生側にとっては、学生時代の最大8年間のみの問題であって、ずっと住み続ける訳では無いので、余りにも分が悪いと思って観ていました。
台詞がかなり少ないので、行間を読みながら観ていく必要があるドラマとも感じました。
でも、意外に台詞が少ない割りには登場人物が皆キャラクターが立っていましたので、決してお話に付いていくのに困ることはなかったです。
主人公キューピー(須藤蓮さん)に対して志村(岡山天音さん)が語る理論立てた台詞が、寮生側と大学側の双方を隔てる<見えない壁>の存在の無力感をよく表していたと思います。
この作品が「大きな力に居場所を奪われようとしている若者達の純粋で不器用な抵抗。その輝きと葛藤の物語。」と謳う通り、お話しに結論づけることがなかなか難しいテーマの中で、ドラマ版では、やはり中途半端な終わり方をしていましたが、学生達の寮への愛情がよく伝わるドラマでした。
そこを補うべく、劇場版ではわずか数分ながら<未公開カット>や<近衛寮のその後の物語>の追撮を加え、またクライマックスには、ドラマ版に共感された人々が一同に介して参加するセッションシーンが実現。
後半に進むにつれて、大学側と寮生側の双方に各々の言い分がある状況は、あたかも大袈裟に言えば、中東のパレスチナ自治政府とイスラエルの関係の様にも見えて来て、より普遍的な問題として問題提起なされるべきとも思えなくもないドラマでしたので、つい引き込まれる様なお話しでした。
しかしながらも、自由な校風を標榜してきた印象の旧帝国大学でさえも、学生による自治まで資本主義の合理化の波にあらがうことが出来ない現実はあまりにも悲しすぎました。
私を含む多くの観客の声は、成海璃子さん演じる女性の励ましのメッセージに込められているのではと思いました。
私的な評価としましては、
お話しに結論づけることがなかなか難しいテーマであり、普遍的な問題を採り上げてながらも、そんな中で、少しでも抵抗しようと不器用に頑張る若者たちの姿をよく描いていたと思います。
但しながらも、京都を舞台にしたご当地ドラマでしたが、贔屓目に見ましても、追撮部分があまりにも少な過ぎて、単発ドラマを映画化した劇場版と呼ぶには惜しい映画に感じましたので、五つ星評価的には、★★★☆の三つ星半評価に止まる評価とさせて頂きました。
世界では人々を隔てる壁はなくなってきているイメージなのだが、現実には逆の状況が身近なところでも起きていることを告発する作品。旧い大学自治寮の存続運動をめぐる若者達の姿を、打ち込む者あり、冷める者もあり、モテるためにやる気になる者あり、と青春期の熱情を交えながらごく自然に描いていて好感が持てた。自由を標榜してきた印象の、大きな国立大学でさえ資本主義の波に逆らうことができない現実は悲しすぎる。私を含む多くの観客の声は、ラストの成海さん演じる女性の励ましのメッセージに込められていると思った。
鑑賞後、人間の幸福にとって必要な何かって何なんだ?って漠然としながら、久々に渋谷の宮下公園の横までやって来た時、変わり果てた宮下公園の現状を目の当たりにして驚いた。数階建ての商業ビルとなり果てた姿を見て、これじゃない、と思った。屋上に緑地があるが、そうじゃない、と思った。宮下公園は、木陰で一息出来て、側には空き缶拾いのオッチャンが座り込んでいて、気が休まるんだけどそれでいて夜はうら寂しい、そんな渋谷の異空間でなきゃだめなんだよなあ、って。ああここにも経済至上主義の波が、と思いながら、それは僕個人の勝手なノスタリズムであることも自覚した。そうか、近衛寮もこれを求めていながら、世の趨勢に逆らうことの愚を悟ったのか、彼らは。
民主的な自治で寮を運営してきた学生たちが、全く民主的でない態度の大学側に窮地に追い込まれる。話し合いは時間の無駄で経済的に合理的でない、スピードばかりが重視され、学生の声を無視して計画を進めた方が世の中の競争には勝ちやすいのだ。
学問も何もかも、あらゆるものが合理性に吸収されていく世の中を、一枚の壁をモチーフに見事に描いている。渡辺あやの脚本は本当に素晴らしい。